着物リメイクの一番初めの手順「解き」について。職人の視点から解説
これまで様々な着物リメイクについて解説してきました。現代にこそ価値のある着物リメイクの魅力や、生地の特徴を活かしたデザインを記事でご紹介してきました。今回は、リメイクの工程全体の流れを解説しながら、特に「着物を解く」工程に焦点を当て、失敗しない着物リメイクの手順をお伝えします。
ぜひ、この記事を参考に、タンスに眠る着物を解いてみませんか?
着物リメイクの流れ
着物リメイクは数多くの工程を経て、1つの完成品となります。この流れをざっとまとめると以下のようになります。
- 解き
- 反物に戻す
- 裁断
- 縫製・完成
これらの工程の中で、一番最初の関門となるのが「解き」のステップです。この工程がリメイクの成否を大きく左右します。解く工程も細分化し、できるだけ解きを楽しんで行っていただけるように、ご説明いたします。
着物を解く
眠ったままの着物を、現代の生活に適したアイテムに仕立て直すために欠かせないのが解き。着物リメイクする際、解くことでドレスやスカート、バッグ、クッションカバーなど、日常的に活用できる形へと生まれ変わらせることができます。最も初めに行う工程が「解き」で、着物の形状から、反物の状態に戻していく作業です。
メリット | デメリット |
---|---|
より自由に製作が可能になる | 解く時間や手間がかかる |
仕上がりの完成度が高まる | 作業の難易度が高い |
補強につながる | 工程が複雑になる |
着物を解きリメイクするメリット
- 製作の自由さ:反物に戻すことで制約が減少
- 仕上がりの完成度:生地として扱うことができる
- 補強につながる:古い糸は弱っているため
私たちがリメイクする際に解く理由・メリットとして3つあります。古い着物の形を解き、反物に戻すことで、アイテムをより自由な形に仕立て直すことができます。本来の柄や素材感を生かしながら活用でき、よりしっかりとした仕上がりに。さらに、古いお着物ほど生地よりも"糸"が弱っているため、解き縫い直すことで、着用後の心配が少なくなります。
着物を解きリメイクするデメリット
一方、着物を解くことにはデメリットも存在します。古い糸が弱っているため、解くのに手間や時間がかかることがあります。また、反物へ戻すことで、柄・模様のつながりを再構築する必要が出ることもあります。決して簡単な工程ではないため、そういった点がデメリットになるかもしれません。
それでも挑戦したいという方へ、具体的なステップをご紹介します。
できるだけ以下の手順に従い解いていくことで、難関である解きを途中でめげることなく解き終えることができるでしょう。
リッパーや糸切りバサミを使用して、慎重に糸を切るため、必ずどちらかをご用意ください。特に古い着物の場合、布が劣化している可能性があるため、慎重さが求められます。
生地をどの強さで扱って良いかを把握するために、布を広げ、光に透かして劣化やシミ、虫食いを確認します。
おすすめの順序は「衿→袖→おくみ→身頃」。古い着物は、糸が切れやすかったり、布に食い込んで取りにくかったりするため、焦らず丁寧に作業しましょう。かんぬき留め部分は勢いをつけず、布を破らないよう注意してください。
糸を取り除く際には、リッパーや糸切りバサミを最小限に使用しましょう。縫い跡を親指と人差し指で生地を挟み、なぞるようにして糸を取り除くと、生地に残る糸が激減し、洗いや縫製の工程が非常にスムーズになります。場合によっては、ロールクリーナーやガムテープなどを活用することも可能です。
職人のアドバイス
着物の状態が良い場合には、糸が生地を滑るように抜くことが可能です。返し縫いや玉止めされているポイントにのみ、リッパーや糸切りバサミを使い、その他の部分は生地を寄せるようにして糸を抜きましょう。この方法で、生地を傷つける心配が減り、時間短縮にもつながります。
「2.状態チェック」に補足で、着物自体が弱っているように感じたら、ほどく前に布を軽く引っ張って状態を確認してください。破れてしまうようであれば、洋服への再利用は難しいでしょう。衣服以外の小物などは、他の生地と継ぎ接ぎしたり、接着芯を使い補強したりすることが可能ですので、そちらへの利用をお勧めします。
特に気をつけていただきたいポイントは、袖と身頃の間(脇下部分)は、非常にしっかりと停められているため、無理に生地を引っ張ると破れの原因になるため、慎重にハサミを入れながら解いてください。
以上が、着物解きのステップです。一見複雑で大変のように思えますが、実は着物の多くが手縫いだからこそ可能なことでもあります。もしミシン縫いだった場合には、より多くの時間を要することも。ぜひ、着物リメイクを始めたいとお考えの方の参考にしていただければ幸いです。着物解きのスキルを習得することで、自分の手で着物を再生する楽しみや満足感も得られるはずです。
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よくある質問:着物リメイクの疑問に答えます
- Q. 着物を解くのにどのくらい時間がかかりますか?
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着物の大きさや複雑さにもよりますが、初めての場合は一着あたり2〜4時間程度が目安です。
- Q. 解き作業で布が傷むことはありますか?
-
はい。生地を強く引っ張ることでその可能性は十分にあります。職人に依頼することで、布への余計な負担を防ぐことができます。特にデリケートな正絹などの場合はプロに任せることをおすすめします。
- Q. 解いたあと使えない部分はどうなりますか?
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損傷やシミがある部分は再利用に適さない場合もありますが、小物作りやパッチワークなど別の用途で活用することが可能です。
- Q. 着物リメイクはどの種類の着物が適していますか?
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正絹、小紋、色無地が特におすすめです。振袖や黒留袖もデザイン次第で見事なリメイクが可能です。
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